「始まった裁判員裁判」

(平成211124日、大阪うつぼロータリークラブでの卓話)


1.

今年の5月から始まった裁判員制度は21日で丸半年を経過しました。8月から始まった裁判員裁判は11月21日までに71件が終わり、市民429人が裁判員を経験したと言われています。
私はまだ、裁判員裁判の弁護人をやっていませんが、近いうちに2件ほど、予定しています。皆さんの中にも、あるいは身近な人に裁判員候補者になったとか、裁判員を経験したという人がいるかもしれません。今までなっていなくても、今後誰でも選ばれる可能性はあります。今日は、裁判員になった場合に備えて、裁判員裁判の基礎知識と問題点を少しお話ししたいと思います。


2.

まず、これからお配りするテスト(20問)を10分程度でやってください。
(1)裁判員候補者は選挙権のある人の中からくじで選びますが、どの位の確率で選ばれるでしょうか?(①100〜200人に1人程度 ②400〜800人に1人程度 ③1000〜1200人に1人程度)


(2)裁判員候補者として名簿に載ると、実際の事件ごとにくじで裁判員候補者(50人〜100人)が決まり、裁判所に呼び出され、その中から裁判員6名と補充裁判員2名が選ばれますが、裁判員を辞退できるでしょうか?(①どんな人でも、どんな理由でも辞退出来ない。 ②原則として辞退出来ないが、理由により辞退出来る場合もある ③自由に辞退出来る。)


(3)裁判員候補者や裁判員は裁判所に呼び出された時、日当、交通費等は出るでしょうか?(①国民の義務だから日当等一切出ない。 ②裁判員候補者の段階では日当等は出ないが、裁判員に選ばれたら日当等が出る。 ③裁判員候補者も裁判員も一定額の日当等が出る。)


(4)裁判員になったことを人に話しても良いでしょうか?(①公表することは許されないが、日常生活の中で家族や親しい人に話すことまでは禁止されない。 ②身近な人を含めて全ての人に話すことが禁止されている。 ③裁判員になったことだけなら誰に話しても良い。)


(5)職業によっては、裁判員になることが出来ない人もいますが、次のうち、それに当てはまるのはどれでしょうか?(①新聞記者 ②法律学の大学教授 ③救急医療専門の医師)


(6)裁判員候補者になった人が呼出状で指定された日に裁判所に行くと、新たな質問票を渡されます。この質問票で聞かれることは、次のどれでしょう?(①担当を希望する事件 ②事件と本人との関係 ③裁判員制度に対する意見)


(7)裁判員の選任が終わり、裁判長から必要な説明を受けた後、すべての裁判員がやるべきことがあります。それは次のうちどれでしょうか?(①宣誓をする ②ボディチェックを受ける ③証明写真を撮る)


(8)裁判員裁判は全ての事件が対象となるわけではありません。次のうち、裁判員裁判にならない事件はどれでしょうか?(①人が住んでいる家に火をつけた。 ②近くのコンビニで万引きをした。 ③子供を誘拐して身代金を要求した。)


(9)裁判員が法廷に出るとき、身につけてはいけないものは、次のうちどれでしょうか?

(①ジーンズ ②帽子 ③ノースリーブのシャツ)


(10)裁判員には守秘義務が課せられていますが、公判中に、裁判員が外部に漏らしても法律違反にならないのは、次のうちどれでしょうか?(①法廷で被告人が話した内容 ②評議中にほかの裁判員が述べた意見 ③事件の判決に関する自分の考え)

(11)次のうち、裁判中に裁判員がやってはいけないことは、どれでしょう?(①裁判所にパソコンを持ち込む。 ②休憩時間に近くの喫茶店でコーヒーを飲む。 ③裁判のあとで会社に出社する。)


(12)法廷では裁判員も被告人や証人に質問できることになっていますが、質問の形は次のどれでしょうか?(①自分で直接質問する。 ②裁判官を通して質問する。 ③開廷前に質問票を渡す。)


(13)裁判員は有罪か無罪かだけを決めるのでしょうか?有罪の場合にどのような刑罰にするかも決めるのでしょうか?(①有罪か無罪かだけを決める。 ②有罪か無罪かと、有罪の場合の刑罰についても決める。 ③有罪の場合でもケースによっては刑罰を決めないこともある。)


(14)次のうち、被告人が有罪になるのは、どのパターンでしょうか?(①裁判員6人が有罪と判断した場合 ②裁判員4人と裁判官1人が有罪と判断した場合 ③裁判員1人と裁判官3人が有罪と判断した場合)


(15)裁判員裁判で判決文を作成するのは誰の仕事でしょうか?(①これまで通り裁判官が作成する。 ②裁判員と裁判官が共同で作成する。 ③裁判官の指導で裁判員が作成する。)


(16)裁判員になったら、自分の担当する事件に関するテレビのニュースや新聞を見てもいいですか?(①裁判が終わるまでそれらの情報に接してはいけない。 ②裁判中でも自由に見て良い。 ③ニュースなら良いが、ワイドショーなどは見てはいけない。)


(17)裁判員裁判の判決に不服があった場合、控訴できますか?(①日本は三審制なのでもちろんできる。 ②有罪か無罪かと、被告弁護側のみでき、検察官はできない。 ③全くできない。)


(18)裁判員裁判の判決に不服があって控訴審になった場合、その控訴審も裁判員が参加した裁判になるでしょうか?(①控訴審も裁判員の参加した裁判になる。 ②控訴審は職業裁判官のみの裁判になる。 ③ケースによって、裁判員裁判になることもある。)


(19)裁判員としての仕事を終えた後、いつまで守秘義務が課せられるでしょうか?(①裁判が確定するまで。 ②裁判員候補者としての期間が終了するまで。 ③期間はない。)


(20)日本でもかつて陪審制があったというのは本当でしょうか?(①あった。 ②なかった。 ③陪審制に似た制度(参審制)はあった。)


ーーー正解は次のとおりです。

01=②  02=②  03=③  04=①  05=②  

06=②  07=①  08=②    09=②  10=① 

11=②  12=①  13=②  14=②  15=①  

16=②  17=①  18=②  19=③  20=①

ーーー

3.

裁判員裁判は3年後に見直しがされることになっています。

私が考える裁判員裁判の問題点を少しお話しします。


(1)テスト14に関連することですが、例えば被告人が冤罪を主張している事件で、裁判官を含む5名が有罪・死刑で4名が無罪とします。この場合、判決は死刑ということになりますが、この判決は妥当でしょうか?4人もの人が有罪とするのに疑問を抱いている事件で、過半数で決めるということで死刑にしてよいものでしょうか。現在のところ、死刑事件は1つもなく、覚醒剤事件を除いて無罪を主張している事件も1つもなかったようですが、今後このようなケースが生じる可能性があります。ちなみにアメリカの陪審制では全員一致でないと有罪・無罪を決せられないようになっています。


(2)テスト10の守秘義務に関連し、(1)の問題点とも関連するのですが、評議で無罪を主張し、死刑に反対した裁判員が多数決で負け、事後に評議の内容を明らかにした場合、守秘義務違反ということで処罰されることになるのでしょうか。特に裁判官が有罪の方向に誘導したり、強引に持っていった場合、そのような経過を裁判員が批判的に明らかにした場合処罰されるというのは不当ではないでしょうか。


(3)テスト13に関連することですが、英米の陪審制と異なり、日本の裁判員裁判は有罪・無罪だけでなく、量刑についても決めることになっています。そこで、今までのケースではなかったのですが、死刑判決を下さねばならないような場合、裁判員には酷なことにならないでしょうか。


(4)テスト17と18に関連することですが、裁判員裁判の判決に対して弁護側、検察側共に控訴ができ、控訴審では職業裁判官のみで裁くということです。控訴審で一審と異なる結論になった場合、何のための市民参加の裁判だったのかということにならないかということです。特に一審の裁判員裁判で無罪だったような場合、それを職業裁判官がくつがえすことができないようにするべきではないでしょうか。ちなみに英米の陪審制では、一審無罪の場合、検察官は控訴できないことになっています。


以上私があげた裁判員裁判の問題点は、今のところまだ顕在化していませんが、今後、本格的に無罪を主張する事件や死刑事件を裁判員裁判でやるようになったときには、議論になるところでしょう。裁判員として参加する、しないにかかわらず、今後裁判員裁判について関心をもって見守っていって頂きたいと思います。








片見冨士夫法律事務所

〒564-0053

大阪府吹田市江の木町2−32

フレアコート江坂503

TEL :06-6170-1597

FAX :  06-6170-1598

 

地下鉄御堂筋線

江坂駅下車徒歩3分

 

月〜金曜日

午前9時30分~午後5時30分

土・日及び夜間のご相談も可能です。お問合せください。

 

email;f.katami.l.o@gmail.com

 

お気軽にご相談ください